特許翻訳「虎の穴」
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特許翻訳「虎の穴」特許翻訳家 児島和男(有限会社創和エイジェンシー・ISS講師)のブログ。知財翻訳・弁理士業務・翻訳者養成に関する問題提起と意見交換のために
2009.02.01 Sunday
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2006.02.23 Thursday
翻訳力って何だ?(2)
翻訳力って何だ?(2)
(1)で述べた翻訳力の4つの要件のうちのB(構文解析力)とD(文章表現力)は個々人に大きく依存していると思いますが、仮に翻訳者が優れた能力を持っていても、日本語明細書の記述が曖昧であったり、複雑すぎたりすると、適切な翻訳ができない場合があります。(日本語による特許明細書における記述の問題点については本ブログの「日本語による科学技術論理表現の明晰化」参照)。もちろん、特許の内容から、記述が専門的な知見に基づく複雑な構文にならざるを得ない場合もありますが、日本語明細書記述者に文章表現力が備わっていないから、曖昧で複雑な文章になっている場合もあるのです。ある特許事務所で働いている女性が「ひとりの先生の書く明細書はとても分かりやすいのに、別の先生の書く明細書は何が書いてあるんだかさっぱり分からない」と言っていましたが、実際そういうことはあります。翻訳者は訳すために意味を理解しようと意識を集中させて文章を読む善意の読み手です。翻訳者が理解できないような文章は、一般の読者には「分かりっこない」のであって、そのようなことでいいのでしょうか? 翻訳という作業は明晰に記述された文章を前提としているのに、実際の仕事ではこの前提条件が満たされていない場合が多いのです。そこで、翻訳力の要件B、つまり、構文解析力とは、1)本来高度で複雑な科学技術論文の構文を解析・把握する、2)粗雑に記述された科学技術論文における論理の流れを推測・把握して、構文を再構成し、翻訳できる日本語の文章にリライトする、という2つの面を備えていなければなりません。1)では理数科系の直観力や演繹力も役立つでしょうが、2)の面はかなり総合的な能力を必要としており、翻訳力の4つの要件のすべてが満たされていて初めて達成できる課題です。 翻訳力の要件Bの2)、つまり、必ずしも明晰でない日本語の記述から論理の流れを読み取って再構成する力が、文章表現力(要件D)につながっているのではないでしょうか?この文章表現力には、能力の他に意志(性格)も関係していると思います。表現とは伝えようとする意志に基づくものですから、論理的なことがらを曖昧にしていても平気なひとは所詮その意志が弱く、曖昧では我慢できない人はその意志が強いのです。翻訳をやらせてみると、辞書などで調べて術語などはほぼ正しく訳せていても文章の調子が弱く、なんとなくメッセージが伝わってこない文章を書く方がいます。原文をほぼ理解できたことに満足していて、それを翻訳して表現した文章が読み手にとって十分な説得力を持っているかどうかまで考えが及んでいないのです。これは能力の問題というより、むしろ意志の問題かもしれません。世の中で「理屈っぽい奴」は嫌われるのが相場ですが、特許翻訳では、案外その資質が貴重かも。論理を主張し、その主張が成り立つ理由や条件をきちんと説明するという意志を持つ人が、特許明細書を記述したり、翻訳したりする職業に向いているのかもしれません。 特許翻訳講座を通じてたくさんの方と触れ合う機会があり、途中で挫折・挫折する方もいる反面、短期間でめざましく上達される方もいるのはどうしてなのか、という疑問から、「翻訳力って何だ?」と自問自答してみました。みなさんはどのようにお考えですか? この記事に対するご意見、ご感想は以下のcommentsをクリックしてお寄せください。 |